「変形性膝関節症」とは、加齢や肥満、怪我などにより間接の軟骨がすり減り、骨が変形して痛みが生じる病気のことです。

変形性膝関節症は原因がない「一次性関節症」と、けがや炎症などが起きた後に生じる「二次性関節症」に分けられますが、90%以上は「一次性関節症」と診断されます。

変形性膝関節症の原因

変形性膝関節症の原因や悪化する要因については、これまで多くの研究が行われており「女性」、「肥満」、「O脚」が変形性膝関節症と関係していると言われています。

日本人は、O脚の割合が多く、膝の内側に負担がかかりやすくなっています。事実として、変形性膝関節症を発症した日本人の患者の90%近くが、膝の内側が変形している症状が見られます。

変形性膝関節症の治療

一度擦り減った関節軟骨は、治療を行っても元の形に修復することはありません。治療では、痛みをとること、膝が曲がり切らない、伸び切らない状態を改善すること、膝の機能を高めることを目的に行います。

治療方法は、「薬物療法」と、「温熱・冷却療法」、「運動療法」の3つあります。治療は症状の進行や痛みの程度によって変わります。3つの治療でも痛みが改善しない場合、外科的療法を行います。ここからは、治療法についてより詳しくご紹介していきます。

1. 薬物療法

変形性膝関節症は、処方できる薬がいくつかあります。薬は炎症や痛みなどの症状を軽くして、回復をより手助けするもので、根本的に病気を治すものではありません。

2. 温熱・冷却療法

変形性膝関節症の痛みや炎症を抑えるには、患部を温めるか、冷やす治療が効果的です。基本的に慢性的に変形性膝関節症の症状を感じている場合は「温熱療法」、急性で膝が熱っぽく腫れている場合は「冷却療法」が効果的です。

温熱療法を家庭で行う場合、お風呂で患部を温めたり、温湿布やホットパック使用する方法があります。患部にサポートを当て、なるべく冷やさないことも重要です。

3. 運動療法

運動療法は、症状の緩和と病気の根本的な治療に繋げることができます。

運動は血行を良くして患部を温めるので痛みが和らぐほか、関節の動きをよりスムーズにできます。

また、運動をすると血流が良くなり、関節部分に栄養が届きやすくなります。炎症の原因となる老廃物も排泄され、細胞も活性化して、病気の抑制や再発防止、治療効果が期待できます。

4. 外科療法

ご紹介した治療法を行っても症状が改善しない場合、最終的に外科的療法を行います。

外科手術を受ければ痛みもなくなって活動範囲が広がり、精神面でもポジティブになれます。

一方、手術にはメリット・デメリットがあります。医師は患者さんの年齢や体力、どこまで回復したいのかなどの希望を伺いながら、適切な手術を行います。

変形性膝関節症の中医学の視点

変形性膝関節症は中医学において証はありません。そのため、症状や痛み方、体質などを総合して証を立てます。

中医学における変形性膝関節症の原因は、「津液」の障害だと考えられます。津液とは、体内の水分で関節や靭帯、筋肉に潤いを与えて動きをスムーズにするもの。津液が不足したり、流れが悪くなることで障害が発生します。

津液と深く関わっている臓器は「脾」、「肺」、「腎」。これらが協力して生成や運搬、排泄を行っていますが、どの機能が失調しても障害が発生します。

病因には風、寒、湿、熱、火、暑、燥などの外因(季節や環境)によるものや、心理などの内因のもの、飲食の不摂生、外傷、疲労、運動不足などの不内外因があり、中でも「寒」と「湿」が大きく関わっています。このことについて、より詳しく解説していきます。

  • 温熱証

寒性が水湿の邪に加わったもので、膝関節が冷えて痛む、腫れる、関節を温めると楽になる、舌苔が白くて厚いなどが挙げられます。

  • 肝腎陰虚証

「肝」と「腎」は互いになくてはならない存在です。
肝腎陰虚証は、慢性病や疲労、加齢などにより、どちらかのバランスが崩れると起こります。
腎陰は脳や骨、髄を滋養する働きがあります、これが不足すると足腰がだるくなり、筋肉が萎縮します。舌の色が紅い、裂紋がある、舌苔は薄くて白いか黄色くて乾燥しているなどが挙げられます。

  • 脾腎陽虚証

「腎」と「陽」は陽気を作り、全身を温めます。津液を温めることで、水邪の氾濫や水湿の内停を抑えることもできます。腎陽は脾陽を温煦して、消化や吸収、輸送をサポートします。
さらに、脾の働きで腎精(生命エネルギー)も補充されます。慢性疾患や疲労、倦怠感などから水邪が体内に長く停滞し、腎陽虚(腎陽が不足している状態)に。さらに脾陽虚が加わることで症状が起こります。腰膝が冷えて痛み、舌の色は淡く、舌苔は白く滑らかなどが挙げられます。