当院が花粉症に対する考え方

東洋医学における花粉の病因や施術方東洋医学や中医学では、花粉の原因を「花粉そのもの」と考えるのではなく、その人が本来持っている「正気」が弱っていることも発症の原因だと考えています。

花粉症はその人の体質や抵抗力によって症状が変わります。東洋医学の花粉の治療では、「臓腑の失調が関わっているか」や、「気、血、津液が十分に循環しているか」など、全体を観察しながら原因を見極め、施術方法を考えていきます。

1.肝気鬱結(かんきうっけつ)

【病因】

肝の主な働きは「疏泄(そせつ)機能」です。これは体を構成している気や血、水の循環をスムーズにするための機能。それだけではなく、疏泄機能は感情にも作用します。

抑うつや怒りといった感情は肝にダメージを与えるため、注意が必要です。

また、「肝気欝結」は疏泄機能の働きが鈍り、全身の気の循環が悪くなっている状態で、各臓腑にも作用して体の機能を低下させてしまいます。

【症状】

自然観における「肝」は「春」です。春は「肝気」という肝の生理機能が高ぶりやすくなっていて、気の上逆が発生しやすくなっています。これが花粉症の原因のひとつだと考えらています。

具体的な症状は、寝つきが悪くなったり、仰うつやイライラ、すぐに怒ってしまう、ため息を頻繁につくなどです。また、涙目や目の乾燥、かゆみ、充血といった、目や鼻に症状もよく現れます。

【治療】

このような場合、「疎肝理気(そかんりき)」という肝気の滞りを改善する施術方法を行います。

2.心腎不交(しんじんふこう)

【病因】

「心」と「腎」は深く関わり合っている器官です。体の状態が健康なら、心火が胃に下がり腎水を温めて全身に循環させます。それにより腎水は上に上がり、心を冷やして滋養してくれるのです。

一方、ストレスが溜まって心火が亢進したり、肉体的な疲労が重なったりすると腎の陽気が足りなくなり、心と腎がお互いを支え合うことができなくなります。

【症状】

腎は水液の代謝にも関わる部分です。心腎の状態が良くないと水湿の代謝がスムーズに行われません。このような状態となると、鼻水が水のようにサラサラすることがあります。他の症状としては、不眠や動悸、めまい、腰や膝がだるいなどが挙げられます。

【治療】

このような症状の場合、「滋陰降火(じいんこうか)」で腎を滋養して心の状態を整えたり、「交通心腎(こうつうしんじん)」を行い、心と腎がよりスムーズに作用し合うように治療を行います。

3.脾胃湿熱(ひいしつねつ)

【病因】

脾の生理機能の中でも重要な働きをする部分で、消化吸収をする運化作用があります。「脾」は気や血、津液の生成、水分の循環や代謝を行います。

ですが、食生活の悪化などが続くと、偏食や湿熱の邪が脾胃に溜まり、運化作用がうまく働かなくなります。そうなると水湿が滞り、脾胃が熱を持ちやすくなってしまうのです。

【症状】

水湿が滞ると、体内の余分な水分が循環せずに滞ってしまうため、各臓腑の機能が十分に作用せず、外邪の影響を受けやすくなります。

主な症状は腹満や腹痛、食欲不振、下痢、嘔吐、体のかゆみ、手足のだるさなどが挙げられます。花粉症になると涙や鼻水が出やすく、鼻づまりになることもあります。

【治療】

このような症状の場合、「清利脾胃(せいりひい)」で脾胃働きをサポートし、湿熱の邪を取り除く治療を行います。

4.風熱犯肺(ふうねつはんはい)

【病因】

肺は呼吸を司る期間です。生理機能のひとつに「宣発作用(せんぱつさよう)」が挙げられます。これは衛気や津液を体内に行き渡らせる作用のことで、外邪を防ぐ作用もあります。

風熱の邪は、肺へ入ると宣発作用を妨げてしまいます。このような状態を「風熱犯肺」と呼びます。

【症状】

肺の生理状態の症状は鼻に現れます。肺と関わりが深い宣発機能が低下すると、咳や痰といった症状が引き起こされます。他にも鼻汁や黄色い痰、咳嗽、鼻閉、悪寒、のどの痛みなどの症状も現れる事が考えられます。

【治療】

このような症状の場合、「阻散風熱(そさんふうねつ))で風熱の邪を取り除いていく施術を行います。

5.水液内停(すいえきないてい)

【病因】

風や寒、暑、湿、燥、火の異常な気候変化である「外感六淫(ろくいん)」や、精神の変化や食生活の乱れ、肉体的、精神的疲労、汚れた血液が溜まるなどの原因で引き起こされる「七情内傷(しちじょうないしょう)」がきっかけで各臓腑の働きが悪くなると、体内の一部分や全身に水液が滞ってこのような症状が体に怒ることが考えられます。

【症状】

どの臓腑の働きが悪くなっているかによりますが、肺の場合は咳や喀痰、鼻汁などが引き起こされます。胃の場合は、悪心や嘔吐、胃に水が溜まるといった症状が現れます。

【治療】

このような症状の場合、「化痰化飲(かたんかいん)」で痰や水湿を消化し、排出させる施術を行います。

東洋医学における花粉症の症状や施術法は以上です。

花粉症になった時は、心身のバランスが崩れることも多いので、お悩みの際はぜひお気軽にご相談ください。

鍼灸における花粉の病因や施術方法