”感情”と”五臓”
東洋医学の世界では、”感情”と”五臓”には密接な関係があると考えられています。
直感的に「関係ないでしょ」と思われた方も多いと思いますが、緊張している時に胃がキリキリとしたり、凹んでいる時に体調不良を感じたりといったことは、誰しも経験があるのではないかと思います。
もっと簡単にいってしまうと、ストレスです。
東洋医学の『陰陽五行説』では、”五臓には感情が宿っている”と考えられていて、五臓の不調が感情に表れたり、感情の乱れが身体の不調に繋がったりするといわれています。
1つ例をあげるとすると、喜怒哀楽の”怒”の感情は、肝と深く関係しています。
今回は、私たちの”感情”と”五臓”の関係性について、詳しく解説していきたいと思います。

◎陰陽五行説とは?
『陰陽五行説』は、紀元前3000年頃の古代中国でうまれた”陰陽論”と紀元前2000年頃うまれた”五行説”の2つの説を組み合わせてつくられたものです。
この宇宙全てのものは、陰と陽の2つ、そして、5つの元素からなる、というものです。
~五行説と五臓の関係性~
『五行説』とは「万物は自然界における”木・火・土・金・水”の5つの物質により構成され、そのバランスのもとに成り立っている」という哲学のことです。
実は人間の”五臓”というのも、ここに由来しています。
五臓ときくと、肝臓、心臓、膵臓、脾臓、腎臓の臓器の名称を思い浮かべる方が多いと思いますが、実際の五臓は、「肝」、「心」、「脾」、「肺」、「腎」で、私たちの思っているそれとは少し異なります。
~感情との相関関係~
東洋医学では、過度なストレス、我慢している感情があると、内臓に影響を及ぼし、血行やエネルギーの循環が悪くなる、病気の原因の1つになると考えられてきました。
東洋医学における感情というのは、”怒”、”喜”、”思”、”憂”、”悲”、”恐”、”驚”の7つです。
- 「肝」に影響する”怒”
「肝」は、循環、代謝、排泄、解毒を司る部分です。
名前の通り、肝臓や胆のうの他、自律神経や目、涙、爪なんかにも影響するといわれています。
”怒”、つまりイライラしたり、怒ったりすると、肝に負担がかかり、肝に影響が出ると、イライラしたり、怒りっぽくなります。
正義感の強い方や責任感の強い方、人に弱みを見せない方なんかは、この「肝」を労るように心がけていきましょう。

- 「心」に影響する”喜”
「心」は心臓、小腸の他、舌や脈拍、汗などの循環や脳の動きも司っています。
”喜”の感情は良いことですが、気持ちが高ぶり過ぎて興奮状態が続くと、かえって心に負担をかけてしまうことになります。
負担のかかった心は、感情を不安定にさせ、興奮状態から、眠りにつきにくい、眠りが浅いなどの睡眠障害の原因になることがあります。
自分の好きなことをして、気持ちを落ち着かせ、リラックスすることも時には大切です。

- 「脾」に影響する”思”
「脾」は、消化や吸収といったはたらきがあります。
思い悩んでしまっている時等に影響を強く及ぼし、胃の不調が出ることもあります。また、脾が弱ることで、さらに負の思考が加速化してしまうので注意が必要です。
記憶力、思考力が高く、いわゆる”仕事のデキる人”はこのタイプの人が多いです。
常に思考を張り巡らせていると自分のストレスにも気付きにくいので、こまめに運動するなどのストレス発散法を取り入れてください。

- 「肺」に影響する”憂”と”悲”
「肺」は呼吸器に大きく関わる部分ですが、水分の循環やバリア機能にも関わるため、鼻やのど、体毛なども含まれます。
共感力の強い方は肺を痛めやすく、憂鬱な気持ちや悲しみが続くことで、さらに肺を弱めます。
呼吸が浅くなり、気持ちもどんどん沈んでしまいますので、悲しい時は涙を流したり、好きなことをして過ごしてください。

- 「腎」が影響する”恐”と”驚”
「腎」は生命力を保持する役目があります。生殖や成長、老化もこの「腎」のはたらきです。腎臓の他、膀胱、骨、骨髄などもここに含まれます。
ビックリしたり、怖い思いをしたり、怯えることがあると、これらに不調を感じます。
とくに恐怖心は気を下げ、弱まることで、些細な事にも不安を感じるようになり、負の連鎖が生じてしまいます。
恐怖で失禁してしまったり、緊張するとトイレに行きたくなるというのもここに大きく関係しているといわれています。

あなたの普段感じている感情は、五臓の疲れや弱まりから来ているものである可能性も十分に考えられます。
今回紹介した7つの感情全ては、”ストレス”と直結しますので、日頃からストレスを溜めない生活を心がけることが大切です。
現代人はストレスと常に隣り合わせにいると思いますが、その中でも、運動をしたり、趣味に没頭したり、自分の好きな方法でストレスを少しずつ解消していきましょう。
人間ですので、当然、1つの感情に囚われてしまうことだってあると思います。
でも、それは、自然なことで、当たり前です。ただ、気持ちは体調面にも関わる”エネルギー”であることをどうか忘れないでください。
マイナス思考の裏には、プラス思考もあり、私たちはネガティブとポジティブを繰り返して日々を送っています。ただ、内に秘めた感情には気付いていない方も多くいらっしゃいますので、五臓と感情の関係性を知り、自分の本当の”感情”を知ることからはじめてみてはいかがでしょうか?
自分の内なる感情を知り、受け入れることで、7つもある感情の変化に柔軟に対応していく力を養うことができます。
是非、今回の内容をきっかけに自分自身を見つめ直していただけると幸いです。
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