四十肩や五十肩とは?

四十肩や五十肩とは

肩関節周辺の炎症により、腕が思うように上がらない、動かないといった症状が出るものです。
最近では、新型コロナワクチン接種後副反応として注目されている症状の一つでもあります。
よく耳にするこの四十肩や五十肩というのは、”俗称”であり、正式な病名ではありません。
ただ、私を含め、病院やクリニックでも「四十肩(五十肩)ですね」といった表現はよく使われています。
そもそもの語源は、名前の通り、40~50代の人がなりやすいことに由来しています。
ただ、原因は肩関節の炎症が理由となっていることが多いので、「俗にいう”四十肩”ですね。具体的には肩関節の炎症が原因で~」と説明を行っています。その四十肩や五十肩に病名をつけるとするならば、1番近い病名に”肩関節周囲炎”というものがあります。
肩関節の周囲に炎症が起きている、というざっくりなものにはなりますが、四十肩や五十肩の原因としては最適ともいえます。
今日はその四十肩(五十肩)について、さらに原因を深掘りしていきたいと思います。


◎四十肩(五十肩)の原因

肩関節周辺の炎症というのは、もっと具体的に示すと、腱板と呼ばれるインナーマッスルの筋の炎症上腕二頭筋と呼ばれる力こぶの部分の炎症が考えられます。
また、腱板疎部と呼ばれる肩の前側の膜や靭帯に炎症が起こることもあります。
それぞれ、腱板炎や上腕二頭筋長頭腱炎、腱板疎部炎と呼ばれていますが、これらをひっくるめて「肩関節周囲炎」という病名があります。
また、典型的な四十肩(五十肩)としては、「癒着性肩関節包炎」という病名もあります。
これは、関節包と呼ばれる肩関節を包み込んでいる膜の炎症のことで、癒着して厚みを増し、痛みが生じたり、可動域が狭くなることを指しています
四十肩(五十肩)になっている患者さまの中でも、深く原因を突き詰めていくと原因は異なり、肩関節にも色々な部位があるのだということがお分かりいただけると思います。

◎四十肩や五十肩の根本的な原因

では、次は「何故」四十肩や五十肩の症状が出るのか、炎症や癒着のそもそもの原因について、紹介していきたいと思います。
四十肩や五十肩になるメカニズムは、結論から先にいってしまうと、「原因不明」に近しいものがあります。
肩甲骨や肩関節の動きに関係することは分かっていますが、手首に原因がある、前腕に原因がある、先生によって考え方も大きく異なるので、混乱してしまう患者さまも多いのではないかと思います。
このように原因が明らかでないからこそ、ざっくりとした”肩関節周囲炎”という病名がつき、四十肩などの俗称で呼ばれている、というのが私の見解です。先ほど、典型的な四十肩は”癒着性肩関節包炎”であると紹介させていただきましたが、この関節包は肩をぐるりと全方向から包み込んでいるものですので、肩の前後ろ上側下側と原因のある場所が広いです。
そのため、腕を上げるのも痛いし、腕を後ろに反らすのも痛い夜に腕まで痛くなると言った全体的な症状が出るというわけです。
関節包の中でも、最初に症状が出やすいのが肩の前側に位置する”腱板疎部”と呼ばれる部分です。
つまり、四十肩(五十肩)の初期症状としては、前に痛みが出やすいということになります。
ただ、四十肩というのは、常に痛い、というわけではないのも特徴の1つです。
炎症期凍結期回復期という3つのサイクルで変化・改善していきます。
初めは炎症による痛みが出るものの、痛みは徐々にひいて今度は拘縮といって可動域が狭くなる症状が出ます。
その拘縮も少しずつ溶けて回復傾向になるのが、よくある四十肩の症状の流れです。
ただ、一般的にはそういったサイクルを辿る人もたくさんいますが、必ずしも、全身に当てはまるというわけではありません。
痛みはほとんど感じないままに可動域だけ狭くなる方もいますし、逆に痛みが強く腕を動かすのが辛いという方もいます。
日常生活に支障が出るほどの症状の人もいれば、日常生活を送る分には何も問題ない人もいるなど、症状は個人差が大きいです。
また、回復についても、数ヶ月で回復する人もいれば、1~2年と長期にわたって四十肩の症状が出る人もいます。
10人患者さんがいれば、10通りの症状があるといっても過言ではないくらい、四十肩の症状は人それぞれです。
そのため、現在の症状を見極めて、症状に合った治療をすることを強くおすすめしています。


◎四十肩(五十肩)で腕が痛い時の対処法


四十肩とはいいますが、実際の患者さまのお話をきくと、「肩」ではなく「腕」に症状を感じている人も多いです。

肩に原因があるのは間違いありませんが、腕に症状が出るのは”放散痛”と呼ばれるものです。
この放散痛に関しても、原因は明らかになっていません。
よくいわれるのは、肩を動かす三角筋の付着部に炎症が起きている、末梢神経に原因がある、肩の可動域が狭くなることで筋肉が固くなってしまっているなどの原因ですが、ハッキリとメカニズムが判明しているわけではありません。
どのケースにせよ、「肩」に何らかの原因が生じているのは確かですので、肩に治療を施し、腕の痛みを解消していく、というのが四十肩の治療となります。