鍼灸とは①

浦安駅から徒歩1分、セドナ鍼灸治療院の大谷です。

鍼灸と聞くと医療というよりはむしろ民間療法というイメージを持たれる方が多いように思います。しかし実際は、WHO(世界保健機関)からもその効果を認められています。鍼灸治療とはいまや中国・日本のみならず、世界各国で普及が進められている確かな治療手法なのです。

奥の深い鍼灸治療についてご紹介いたします。

鍼灸治療とは?

鍼灸治療を行えるのは国家資格試験を合格した「はり師」と「きゅう師」のみです。それぞれ鍼(はり)とお灸(きゅう)を使用します。長いハリや火を使いますからまれに痛みを心配される人がいますが、一般に使われる鍼は髪の毛ほどのごく細いものを使用しますので、刺される痛みというのはほとんどありません。(ときに皮膚の痛点に触れた場合にはチクッとした感覚がある場合もあります)

鍼灸の治療における基本的な考えは「気・血・水」です。

「気」とは

体内を流れるエネルギーのこと。元気・気力といった意味にも使われます。

「血」とは

体内を流れる血液のこと。血液は絶えず全身を循環して栄養と潤いを与える要です。

「水」とは

血液以外の体内にある水分のこと。リンパ液などを指します。臓器を正常に働かせ、消化や排せつ機能を保つ潤滑油となります。

これらのバランスが安定しているときは身体が健康であり、逆に不安定であるならば治療の必要があるということになります。そして「気・血・水」のどのバランスがどのように崩れているかによって、鍼灸では2000以上のツボを使い分け、症状に合わせて改善を図っていくのです。

とくに「気・血」が体内を巡る通り道のことを「経絡」と言い、この「経絡」は「ツボ(経穴)」の集合体にあたる、鍼灸ではとても肝心なものです。何らの身体の不調や病気にかかったときには必ずこの経路がスムーズに流れていないときなのです。

鍼灸治療とは、経絡の各所にあるツボに鍼や灸を施すことで、滞っている経絡を正常に戻して「気・血」を正しくすることともいえます。

東洋医学と鍼灸治療の仕組み

西洋医学では病気の原因を外部に求め、菌やウイルスに対し薬を使う、といったようなアプローチ方法を取ります。しかし東洋医学ではそもそも病気になる原因は自身の身体のバランスが崩れているからであると考えられており、自然治癒力によりそのバランスをもとに戻せば病気も治る、というような考え方をしています。

このように西洋医学と東洋医学とでは考え方の違いはありますが、その方の健康を取り戻という目的は同じです。どちらかのみを選ぶのではなく、同じ医学の中の異なる領域として、適時使い分けていくことがベストであると考えています。

とはいえ、鍼灸といえば「頭痛・肩こり」を和らげる、くらいのイメージのままでいる方が多いかも知れませんね。

鍼灸はいまや日本よりもアメリカやヨーロッパの方が医療現場への活用が普及していますから、残念ながら日本は遅れています。医学の東西という枠組はもう外され、グローバルで必要とされる重要な医療手段として、世界が鍼灸に注目しているのは確かでしょう。

しかし、最近では厚生労働省がプロジェクトチームを発足しました。西洋医学だけでは対処できないさまざまな現代疾患に対して、鍼灸治療を取り入れた医療の促進が始まっています。

長い歴史ある鍼灸治療

日本には奈良時代に伝来したといわれている鍼灸ですが、その歴史は大変古く、発祥は2000年以上前の紀元前の中国であったとされています。その頃に中国で鍼治療が広く普及したという文献が残されています。

日本での鍼灸はというと、庶民に広く普及したのは江戸時代。その後の明治時代には西洋医学の推進が明治政府により始まりましたが、一方で鍼灸の民間での支持は根強く、そうした経緯のもと国家資格が制定され、国家公認の「はり師」「きゅう師」が誕生しました。

戦後には現在でいう「あん摩マッサージ指圧師、はり師きゅう師などに関する法律」の原型といえる法律が制定されました。この頃から、鍼灸の医療的効果に対し、より科学的な視点での裏付けや根拠が強く求められるようになりました。鍼灸の研究が進み、学会レベルで取り上げられるようにもなりました。

日本の鍼灸で使用される鍼は、実は発祥地の中国のものとは異なります。日本の鍼はいわゆる一般的な鍼の太さよりも髪の毛ほどの細い鍼というのが特徴です。これは杉山和一という人物が考案したもので、「管鍼法」という細い鍼と管を組み合わせた日本人に合った鍼治療なのです。日本人が心地よいと思える痛みに改良することで、鍼治療が普及する一助を担ったのでした。

世界へ飛躍する鍼灸治療

民間療法として定着していった鍼灸治療ですが、ここ数十年で世界へ普及し始めました。鍼灸だけではなくその他の伝統的な医学すべてにおいて、国内外問わず研究や実証が進められており、結果を出し始めています。

1979年、WHOが鍼灸治療の適応疾患43疾患を発表しました。

2001年、大学病院での医学部教育課程に東洋医学が取り入れました。

2008年にはWHOによって、ツボの名称や経穴の位置が統一されました。

もはや鍼灸は民間療法ではなく、国家が認める正式な医療として、重要な役割を持つようになってきました。

その背景には、現代疾患の問題があるでしょう。

ストレス(自律神経失調症)、多様なアレルギー(自己免疫疾患)、慢性疲労など、とても主観的な多岐に渡る自覚症状があるものの、検査などでは原因を特定しにくい。そんな症状を臨床用語では「不定愁訴」と呼びます。こうした現代特有の疾患に対して、西洋医学の手法だけでは万全であるとは言い難いのが現状です。

細菌やウイルスの根絶や患部を回復させることに主眼を置く西洋医学。一方、「身体の免疫バランスを整える」ことで病気を治すことを主眼に置くのが東洋医学です。また原因の掴めない症状や慢性的な症状に効果があることが近年実証されたため、東洋医学を治療に取り入れる医療機関は年々増えています。

鍼灸治療の研究と取り組みがようやく始まった日本

日本の現状を見ると鍼灸への理解がまだ乏しく、医療現場において鍼灸を治療手段として有効活用できていないと実感します。実際に日本で健康保険を使って鍼灸治療を行おうとした場合、適応できる症状はたった6つだけ。「保険を使って鍼治療をしよう」とは、なかなかならないのが日本の実情です。

一方でアメリカでの実情はというと、公的医療制度がないという背景から、西洋医学に比べて費用が安い鍼灸治療を選ぶ人が増えています。イギリス、ドイツ、イタリアなどのヨーロッパ諸国では鍼灸治療の際、健康保険制度が積極的に取り入れられています。

先進欧米諸国と比べるとその差は明確であり、医療への活用が課題の一つとなっています。

しかし日本も一歩ずつ進んでいます。

2010年、厚生労働省は「統合医療プロジェクトチーム」を発足しました。

現代西洋医学による医療と、鍼灸をはじめとする補完代替医療(CAM)を組み合わせる「総合医療」の推進を目的としています。

統合医療は「患者中心の医療」とされ、国をあげての研究開発や人材育成がスタートしていますが、とはいえ、現場に変化が現れるのはもう少し先のようです。これからの日本の高齢化社会、医療やリハビリ現場において少しでも早い実践が望まれます。

リハビリ分野への応用が少しずつ進みつつあります

鍼灸のリハビリーテンションへの活用が近年活発になってきています。

とくに脳卒中や脳血管疾患がもたらす後遺症に対し、手・顔・まぶたと眼球・唇を刺激することにより、失われた機関を補完する働きが期待できるのではないか、と考えられています。

まだ臨床段階の話ではありますが、後遺症回復の事例が少しずつ積み重なってきています。鍼灸の今後のさらなる活用が期待されています。