更年期障害と不眠症
最適な睡眠時間は、その方によって異なりますし、その時々の体調や生活習慣によっても変わります。
健康を促進するポスターなどで「1日7時間は睡眠時間を取るように心がけましょう」という言葉をたまに見かけますが、これも当てはまるケースと当てはまらないケースがあります。5時間睡眠でも十分な方もいれば、8時間は寝ないとスッキリ起きられない、という方もいるのです。
また、睡眠は時間だけではなく「質」も重要です。人間は浅く寝られる時と深く寝られる時があり、「昨日は4時間しか眠れなかった」という場合でも、深く就寝できていることもあります。
「最近しっかり睡眠できていないような気がする」という方は、睡眠時間の長さや質に加えて、睡眠に満足できているかどうかも合わせて確認することが大切です。
不眠症について
不眠症の症状の特徴は以下の通りです。
・寝つきが悪い
・朝早く起きてしまう
・眠りが浅いと感じる
・しっかり眠れた感じがしない
・眠りが続かない
・日中に眠たくなる
・注意力がなくなる
・疲れを感じやすい
このような症状を感じている場合は、不眠症の可能性があります。
日本では5人に1人が不眠症の症状を感じているといわれていて、その割合は男性よりも女性に多いといわれています。10代の子どもはあまり不眠症になりませんが、20代以降、年齢を重ねていくごとに不眠症で悩む人は増えています。
不眠症のタイプ
不眠症は、いくつかのタイプに分けられます。
ここからはそれぞれのタイプと特徴をご紹介していきます。
①入眠困難
布団に入って30分~1時間以上眠れないことが多い。
②中途覚醒
眠りについた痕、朝起きるまでの間に何回も起きてしまう。
③早朝覚醒
起きる予定の時間よりも早く目が覚めてしまい、その後寝付けない。
④熟眠障害
眠りが浅く、たくさん寝たのに熟睡感が得られない。
不眠症はこの4つのタイプに分けることができます。これらの症状は、いくつか同時に起こることもあります。
不眠症の原因
不眠症は一体何が原因で起こるのでしょうか?
原因は主に以下の通りです。
・環境の変化
暑さや騒音、明るさ、時差、枕などの寝具の買い替えなど。
・身体の症状
年齢や性差、頻尿、痛み、痒さなど。
・心の状態が関わっているもの
イライラや不安、緊張、ストレスなど。
・生活習慣によるもの
飲酒や喫煙、コーヒーなどのカフェインの摂取、薬の副作用、日頃から運動不足気味など。
鍼灸では、1日のうち昼が「陽」で夜が「陰」です。昼間は陽気が活発になっている状態で、意識がしっかりしています。そのため、眠たくなることはあまりありません。ですが、夜になると陰気の傾向が強くなり、少しずつ意識が静まることで、眠気が訪れます。
1日の体のサイクルはこの、「陽」と「陰」のバランスが大切となりますが、状態が良ければ夜は自然と心が安らぎ眠気が訪れます。ですが、何らかの原因でこの「陽」と「陰」のバランスが崩れてしまうと、スムーズに眠ることができません。ポイントとなるのは昼と夜で意識がバランス良く興奮、鎮静すること。このバランスが乱れると、夜は眠れなくて日中は眠たい…、という状況が引き起こされるのです。
鍼灸では、五臓の心(しん)が「意識」を司ると考えます。「心は神志(しんし)をつかさどる」という言葉があるように、意識が鎮静するべき時に神志が乱れると、不眠に繋がります。また、鍼灸では五臓の肝(かん)は精神的な情緒を司ると考えていますが、この機能が乱れた場合も不眠に繋がるといわれています。
ご紹介したように、不眠に繋がる原因は多くあります。生活習慣が正しくても、ストレスが溜まっていれば眠れないこともありますし、ちょっとした環境の変化で不眠に繋がることもあります。不眠で悩んでいるなら、五臓の「心」と「肝」の機能を整えて、意識の状態とバランスを整えることが大切です。
不眠症の「証(しょう)」について
不眠症の「証(しょう)」は、主に次のようなものが挙げられます。
①「心火(しんか))証
意識を司る五臓の「心」は、刺激を受けると亢進して熱を帯びることがあります。このような「心」はその後不眠が引き起こす「心火」となります。
②「心脾両虚(しんぴりょうきょ)」証
疲れや心配事などが続くと、それが原因で「血」と脾の「気」が損傷して、神志が不安定になり不眠になります。
③「陰虚火旺(いんきょかおう)」証
不摂生な生活や疲労が蓄積すると、五臓の腎の陰液が消耗し、熱を抑えられずに心火が生じてしまいます。心と腎はそれぞれ深く関わっている臓器ですが、この証は2つの臓器の相互関係が悪くなっている状態です。そのため「心腎不交(しんじんふこう)」証と呼ぶこともあります。
④「心胆気虚(しんたんききょ)」証
大きなストレスや恐怖を抱えると、五臓の「心」と六蔵の「胆」の気が弱くなり、不眠に繋がります。
⑤「肝火(かんか)」証
精神の情緒を司る五臓の「肝」の気の流れが鬱滞し、熱を帯びて肝火となると不眠状態になります。
⑥「血虚(けっきょ)」証
血液や栄養である「血」が足りていない状態で、神志が乱れて不眠となります。
⑦「痰熱(たんねつ)」証
ストレスや暴飲暴食などで痰飲(たんいん)に熱がこもると痰熱となります。そうなると心のバランスが崩れ、不眠に繋がります。
ご紹介した7つの証の中でも、特に①~④は代表的な不眠の証となります。
女性ホルモンと睡眠の関係
2017年3月に厚生労働省が発表した「国民健康・栄養調査」によると、不眠の症状に悩んでいるのは40~50歳代の女性が多いことが分かります。「日中に眠気を感じた」と回答した女性は全体の約4割となっていて、同時に睡眠時間の確保や睡眠の質も十分ではないと感じている女性も多くいました。
なぜ、40~50歳代の女性がこのような症状を感じることが多いのでしょか?一説によると、その理由は女性ホルモンである「エストロゲン」が「セロトニン」などの活性化や増減に関係していることが挙げられるといいます。
60~70年代の女性も女性ホルモンが低下していますが、完全に女性ホルモンが低下する前の、バランスの変動が起こる更年期の時期に、不眠のような症状が出やすくなるといわれています。
更年期の期間と更年期障害の原因
「更年期」というのは、女性の閉経前後10年ほどの期間を指しますが、この期間中は様々な症状があらわれます。中には日常生活に支障をきたすほどの症状があらわれる場合もあり、このことを「更年期障害」といいます。
更年期障害が起こる原因は、女性ホルモン「エストロゲン」の低下で起きる体の変化に加え、その時の生活環境のストレスも関係しています。
更年期の時期は、ちょうど子どもが成人して家を離れたり、家族の病気、介護など、環境の変化が起きるタイミング。それに加え、職場や家庭内の対人関係などあらゆる環境の変化が起こると、複雑に絡み合って発症に繋がるといわれています。
更年期障害の症状とは?
更年期障害は、主に「血管運動神経症状」、「身体症状」、「精神症状」の3つに分けられます。また、症状が定まらない場合はひとつにまとめて「不定愁訴」と呼ぶこともあります。3つの症状の特徴について、詳しくご紹介していきます。
①血管運動神経症状…発汗、ほてり、のぼせなど
②身体症状…冷え、しびれ、動悸、めまい、頭痛、息苦しさ、肩こり、腰背部痛、関節痛、疲労感など
③精神症状…不眠、不安、抑うつ、うつ、イライラなど
不眠症状への対処方法
不眠に悩んでいる方の中には、
「今日も眠れなかったらどうしよう」
「明日も早起きしないといけないのに眠れない…」
と不安やイライラを感じてしまうことも多いのではないでしょうか?
1日くらいの不眠なら我慢できますが、長期間不眠が続くと、心身ともに辛いですよね?慢性的に不眠が続くのは「不眠恐怖」が関係しています。
眠れないと不安やイライラが募りますが、こんな時は焦らずに「眠たくなるまで起きよう」と決めて起きていた方が結果的に良い影響を与えるといわれています。
逆に眠れない状態で、無理に寝ようとすると不眠が悪化するともいわれています。ベッドに入って眠れないようなら思い切ってベッドから出るのがおすすめです。そして、昼間はなるべく体を動かし、日中眠たくなった時は10分ほど昼寝をしましょう。
当院には、不眠で悩んでいる方も多く来られます。不眠や睡眠のことで悩んでいることがあれば、ぜひ当院までお気軽にご相談ください。
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