摂食障害と東洋医学

摂食障害は食行動の重篤な障害を特徴とする精神疾患です。

極端な食事制限と著しいやせを示す「神経性食欲不振症」や「拒食症」と、むちゃ喰いと体重増加を防ぐための代償行動を繰り返す「神経性過食症」とにわけられます。

いずれもやせ願望や肥満恐怖をもち、自己評価に対する体重・体型の過剰な影響があります。

神経性食欲不振症

摂食障害の中で一番多くみられる症状で、痩せに逃避することで現実のストレスを回避しようと試みるものです。

体型や体重にコンプレックスがあることが多く、心理的要因から過度に食事制限を行い、著しい痩せをきたす疾患です。

そして、食行動の異常や精神症状の他に体重減少による無月経をはじめ様々な内分泌・代謝異常を起こしてしまいます。

最近では発症年齢層の拡大や男性例の増加など、多様化してきています。

この病は心身症であると診断されるケースが多いようです。

医療機関へ行けば、抗うつ薬を処方されたり、命の危険がある状態であれば入院治療を実施したりします。

拒食症

拒食症とは字のごとく食べることを拒むことです。

精神状態として本当は食べることが大好きで頭では食べることばかり考えているのに実際には食べることを拒絶します。

また、痩せる為の行動異常(過活動・偏食・自己誘発性嘔吐等)飢餓の反動による食への強い執着が同時に伴います。

食べる量が圧倒的に少ないので栄養不足(水穀の不足)、物質である陰(血・津液)が不足するので陰虚、血虚の状態になります。

この津液不足の状態が続くと、胃の釜を燃やす為の命門の火(腎の陽気)が燃えなくなり、脾胃の働きがストップし、ますます食べることが出来なくなります。

拒食症だけを発症するケースと過食(神経性過食症)と併発して発症するケースがあります。

神経性過食症

拒食症とは反対に、過食症とは飲食物を過剰に食べることです。

一般的にイメージされる「食べ過ぎ」とは食べる量が全く違います。

ブラックホールが体内に存在しているのではないかと思うような食べ方と表現されることが多いです。

食べ過ぎが続くと胃もたれをするというのはイメージがつくと思いますが、これは食べ過ぎることで水穀を消化させる為に腎の陽気を使い、命門の火を燃やし過ぎることで腎虚が進みます。

特に口にするものは甘味(精製された白砂糖や菓子パン等)が多く、甘味は心身の緊張を緩めてくれる半面、腎の固摂も緩める為に精が漏れやすくなり、ますます腎虚が悪化します。

【腎気は骨髄を生み、脳を養う。脳は思考を生み、視力、聴力をつかさどる】 と素問の陰陽応象大論篇第五 では記載されています。

腎気が不足すると脳の働きが低下し、思考力が鈍り、健忘(物忘れ)、倦怠感や疲労感が強まり、耐久力(持久力・集中力)がなくなります。 病が深刻化していくと、更なる症状が増していきます。

神経性過食症の多くの方は体重増加を恐れ、嘔吐を故意に繰り返したり、下剤を乱用するケースが多くなります。

これらの代償行為も脾胃の働きに深刻なダメージを与えてしまいます。

摂食障害になりやすい性格

・完璧主義の人

・内向的な人

・強迫的な人

・良心的な人

・自己中心的で未熟な人

・努力家の人

・優等生タイプな人

・自己主張が苦手な人

・不安や不満をため込みやすい人

当院での治療法

当院では摂食障害の方に、「食事を適量摂れるように」という治療は行いません。

それでは対症療法でしかありませんし、摂食障害がその方の【本当の症状】とは限らないからです。

その方の身体に本当に起こっている変化・症状は何なのか、これから出てくる本当の症状は何なのかをしっかりと診定めた治療を行います。

摂食障害の奥に隠れている『未病』にフォーカスした治療に興味がある方、ぜひご相談ください。