不眠と体温コントロール

厚生労働省によると日本の一般成人の約20%(5人に1人)が不眠に悩んでおり、約15%が日中に眠気を感じているという統計が出ています。

職場に100人いればなんと20人もの人が不眠で悩んでいるということです。

病院に行った人だけのカウントですので、実際にはもっと多いものと思われます。

以下に当てはまる場合は不眠、または眠りの質が低下している状態だと言えます。

□寝つきが悪い(眠りに入るまで1時間以上かかる)

□眠りはじめて2,3時間ほどで目が覚める

□目覚ましより早く目が覚める

□朝目覚めたときから疲れを感じている

□イビキをしていると言われたことがある

□寝ている間に歯を噛みしめることや歯ぎしりが多い

□夜、十分に睡眠をとっているのに日中どうしようもないほど眠くなる

不眠症と不眠

不眠症の定義は、「夜間中々入眠出来ず寝つくのに普段より2時間以上かかる入眠障害、一旦寝ついても夜中に目が醒め易く2回以上目が醒める中間覚醒、朝起きたときにぐっすり眠った感じの得られない熟眠障害、朝普段よりも2時間以上早く目が醒めてしまう早朝覚醒などの訴えのどれかがあること。そしてこの様な不眠の訴えがしばしば見られ(週2回以上)、かつ少なくとも1ヵ月間は持続すること。不眠のため自らが苦痛を感じるか、社会生活または職業的機能が妨げられること。」だとされています。

(日本睡眠学会 不眠症の定義より引用)

なお精神的なストレスや身体的苦痛のため一時的に夜間良く眠れない状態は、生理学的反応としての不眠ではありますが不眠症とは言いません。

不眠症の定義に当てはまらなくとも、やはり疲れが取れない、日中眠くなる、寝付けない時間がつらいなど、睡眠に関わる症状を抱えている方は非常に多いです。

睡眠と自律神経

睡眠で大事なのが自律神経の働きです。

自律神経は交感神経と副交感神経から成る神経です。

「交感神経」は「労働・闘争・運動・ストレスなどを感じた時」に活動が亢進し、心身を動かすのに適した体内環境を作ります。

逆に「副交感神経」は「休む、眠る、内臓が動いている時・安心感を得た時」などに活動が亢進し、身体を回復させるための神経です。

交感神経と副交感神経の関係は、独立して動くのではなく、「シーソー」のようにどちらの働きが上がると、もう一方は働きが下がります。

つまり、副交感神経優位で脳や体を修復している時には、交換神経の働きが弱まる為に激しく動くことはできません。

同様に交感神経優位で激しく動いている時には、副交感神経の働きが弱まる為に脳や身体の修復はできないのです。

このシーソーのようなバランスが何らかの原因で崩れ、夜中に「交感神経」が働いてしまうと睡眠の質が落ちてしまい「不眠」の症状が現れてしまいます。

睡眠のサイクル

理想的な睡眠に重要なのが「90分サイクル」を整えてうまく活用することです。

睡眠には深い眠り(レム睡眠)と浅い眠り(ノンレム睡眠)があり、眠っている間中、この二つを繰り返しています。

そしてこの繰り返しのワンセットの理想の長さが90分なのです。

ノンレム睡眠は、睡眠が深い状態を示すスパンです。

ノンレム睡眠の間は、成長ホルモンが盛んに分泌されます。

成長ホルモンとは筋肉や骨の成長にかかわるもので、疲労の回復には欠かせません。

また、新陳代謝を促す効果があり、脂肪を分解したり健やかな肌を保ったりする働きがあります。

成長ホルモンは、睡眠中にしか分泌されません。

特に、入眠初期のノンレム睡眠中は、成長ホルモンが活発に分泌されます。

レム睡眠中は眠りが浅く、体は休んでいても脳は機能している状態です。

レム睡眠中の脳は、考えをまとめたり記憶を定着させたりという作業をしています。

また、脳が考えや記憶を整理する際に、夢を見る場合もあります。

レム睡眠中は眠りが浅く、体は休んでいても脳は機能している状態です。

最近では90分サイクルを繰り返すうちの「最初のワンサイクルの90分」がとても重要ということが分かっています。

最初の90分の質がよいと「スッキリ感」や「寝た感」が得られるようで、睡眠で有名なスタンフォード大学の研究でも明らかにされています。

睡眠の質のコントロール

睡眠の質を高める方法はいくつかありますが、始めやすいのは「体温コントロール」です。

体の中の体温を深部体温といい、脇の下などの体表の温度より1℃前後高くなっています。

この深部体温が下がっていくことで眠りが誘発されていくのですが、体温を下げるには手足からの放熱が重要になります。

つまり手足が温まっていると深部体温が下がりやすくなるため、睡眠の質も高めることが出来ます。

逆に手足が冷えている方はうまく深部体温を下げることが出来ず、眠りが浅くなってしまうのです。

体温コントロールを上手に行うためにオススメなのが、お風呂の活用です。

寝たい時間の1~2時間前までに入浴を済ませ体を温めておきます。

この時、よりリラックス効果を出すためにラベンダーやカモミール等鎮静効果のある精油の使用もおすすめです。

風呂から上がったあとは床に熱を取られないように、スリッパなどを履きます。

ここからもし眠気が出てきたらスマホなどは見ずに、迷わず寝ましょう。

せっかく訪れた眠気を乗り越えてしまうと「最初の90分」の入り口を捨ててしまうのと同じです。

もし遅くなってしまった日等に寝る直前に風呂に入ってしまうと、体温が高い状態で布団に入る事になってしまい、頭がさえてしまい入眠しづらくなってしまいます。

その場合は、お風呂の温度を下げたり入浴時間を短くする等の工夫をして頂ければ、入眠までの時間を確保できなくても睡眠の質への影響を軽減することが出来ます。

これから夜の時間が長くなり、夜長の楽しみが増える一方、睡眠に関するお悩みも増える時期です。

気になる事や相談したいことがございましたら是非お問い合わせください。

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