アロマテラピーと自律神経①

今回から3回に分けてアロマテラピーと自律神経についてご紹介いたします。

まずは自律神経とは何なのか、をご説明いたします。

自律神経とは?

自律神経系は、末梢神経系のうち植物性機能を担う神経系であり、動物性機能を担う体性神経系に対比されます。

自律神経系は内臓諸臓器の機能を調節する遠心性機序と内臓からの情報を中枢神経系に伝える求心性の機序という主に2つの働きがあります。

脳や脊髄には自律神経の中枢があり、それぞれ近くの末梢神経に自律神経線維を送っています。

自律神経は英語ではAutonomic nervous systemと言い、その名前の通り、自分の意思でコントロールすることが難しい「不随意神経」に分類されます。

自律神経は「交感神経」と「副交感神経」の2つの神経系で構成されています。

「交感神経」は昼の神経ともいわれこれが緊張すると興奮や戦いの時に優位な状態となります。

逆に「副交感神経」は夜の神経ともいわれ睡眠時やリラックス時に優位になります.

この2つの神経は下の図のようにお互いに拮抗して働いています(拮抗支配)。

つまりこの2つの神経が緊張状態のバランスを常時うまく取り合うことによって、血圧・脈拍・消化吸収・代謝・体温などが調節され、生命は維持していけるのです。

それではまず自律神経の解剖的なことからお話しいたします。

自律神経の中枢は役割ごとに分かれて存在し、大脳の側頭葉内側面にある辺縁系、脳幹にある間脳という部分の視床下部、延髄、脊髄などに存在します。

このうち辺縁系とよばれる部分は感覚系の情報の中継点である視床を通じて、集められた運動や内臓などの感覚を統合して情動の発現に関係します。

視床下部は摂食や飲水の調節・体温の調節などを行っているほか、内分泌系の中枢として甲状腺や副腎などの各種ホルモン分泌のコントロールも行っています。

視床下部は自律神経系と内分泌系の接点にもなっていて、全身の代謝や生殖活動などをコントロールしています。

そして中脳には瞳孔調節、橋には涙腺や唾液腺の調節などの中枢があり、延髄にはご存じのように呼吸や循環の中枢が存在しています。

それから脊髄の自律神経の中枢としては「交感神経」が第1胸髄から第3-4腰髄にかけて、「副交感神経」が仙髄にそれぞれ存在しており、反射的に血圧・発汗・排尿・排便などの調節をしています。

自律神経の働き

次に交感神経と副交感神経の機能を対比させながらもう少し詳しくお話ししていきます。

まず交感神経は、視床下部から始まり延髄を通って胸髄まで行き、そこから末梢へと神経を出していきます。

これに対して副交感神経は、脳幹および仙髄から始まって末梢へと神経を出しています。

このうち、延髄から出ている「迷走神経」は脳内から気管支・肺・心臓・胃や腸と、実に身体の半分にも及ぶほどの長さの神経を体に送っています。

そしてそれぞれの機能について、身体の上から順番に説明していきます。

まず瞳孔ですが、交感神経が緊張すると散大し、副交感神経が優位になると収縮します。

次に呼吸ですが、気道は交感神経刺激で拡張し、副交感神経優位では収縮します。

また呼吸自体も交感神経によって早く大きくなり,副交感神経優位ではその逆となります。

ただし、呼吸だけは本来「不随意神経」である自律神経にアプローチすることができる特殊な機能です。

皆さんも今まで何回も「深呼吸」をしたことがあるかと思います。

緊張した時や興奮した時に意識的に深呼吸をして、気持ちを落ち着かせた経験はありませんか?

実はあれが「人が自分の意志で交感神経に傾きすぎている自律神経を、副交感神経優位にする」数少ない方法なのです。

このことを知っているだけでも、自律神経のセルフコントロールがしやすくなりますので、是非覚えておいてくださいね。

では、それぞれの機能についての説明に戻ります。

血圧ですが、交感神経が緊張すると心臓は心拍数や収縮力が増え、さらに血管も収縮することで血圧が上昇します。

これに対して副交感神経優位では徐脈となり、心収縮力も低下して血圧は下降します。

次に胃腸の運動や消化液の分泌は交感神経の緊張で抑制される為消化作用は減少し、副交感神経では促進されます。

食後に眠くなるのは、体内に入ってきた食物を効率よく消化・代謝するために自律神経が副交感神経優位になる影響です。

また、「イライラすると食欲が増す」という方もいらっしゃるのではないでしょうか?

これは、あまりの交感神経優位の状態に対して身体が「副交感神経優位にしたい→食物を摂取することで副交感神経の働きを活性化させたい→その為に“食欲”という電気信号を脳が発する」という働きによるものです。

ですので「イライラによる食欲を抑えたい」と思っている方は、イライラときは身体を温めたり、ヒーリングミュージックを聴いたりと、別の「副交感神経優位にする行動」をとることで食欲を抑えられます。

次に肝臓では、交感神経優位でグリコーゲンを分解し血糖が上昇し、副交感刺激ではグリコーゲンの合成が盛んになるため血糖は低下します。

膀胱は交感神経の緊張で膀胱壁の筋肉は緩み膀胱頚部の筋肉は締まります(尿が出にくくなります)。

これに対して副交感神経の優位により膀胱壁の筋肉が収縮して排尿が起こります。

最後に皮膚の立毛筋や汗腺は交感神経の単独支配の器官になります。

ですので、交感神経の緊張により、それぞれ働きが刺激されて筋収縮が起こり、鳥肌が立ったり汗の分泌量が増加します。

以上のように交感神経と副交感神経は相反する作用を示しており、交感神経が緊張するとあたかも戦いに臨むサムライのように「かっと目は見開き、喉はからからで血圧や脈拍は上昇し、お腹もすかないし尿意も催さない」というような状態になります。

これに対して副交感神経が優位の状態では、血圧や脈拍は下降し、唾液が出たりお腹が鳴って空腹感を訴えたり尿意を感じたりします。

この状態は睡眠中や食事前後の状態で、生きてゆくためのエネルギーを身体に蓄えている状態ともいえます。

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