頭痛

ひどければ寝込まざるを得ず、軽いものでも集中力を削ぎ、不快にさせるガンコな慢性頭痛。頼れるのは、とりあえず一時的に症状をおさえる薬だけ。

でも、『ずっと薬に頼り続けるのはどうなんだろう?』、『使いすぎると薬物乱用頭痛になってしまうのではないか?』と不安を感じながら生活されている方は多いのではないでしょうか?

一般に、鍼灸治療は肩こり、腰痛、神経痛ぐらいにしか効果がないように思われがちですが、頭痛も治療可能な症状の一つです。

その効果は、アメリカ国立衛生研究所(NIH)や、世界保健機関(WHO)も認められています。

一般的な投薬治療では、かたく緊張した筋肉を緩めたり、血流量を制御したり、頭痛の原因物質の生成を阻害したりすることによって痛みをブロックします。

これに対して、鍼灸や整体治療によって身体の歪みや体内循環の偏りといった「身体に染みついたクセ」を正すことによって、頭痛が起こりにくい身体づくりをお手伝いします。

鍼灸施術にもタイプがあり、東洋医学の理論をベースとしているタイプもあれば、投薬治療同様に西洋医学の理論をベースとしているタイプもあります。

東洋医学の理論をベースとしている鍼灸では、「気・血・水」が全身に過不足なく巡っていれば、自然治癒力が最大限に働くため病気にならないという東洋医学の考えに基づき、それらの循環をツボを使って整えることを目標とします。

ざっくり言ってしまえば、全身のバランスを整えて自然と不調がなくなる身体を作ろうとしているわけです。

これに対して、西洋医学の理論をベースとしている鍼灸では、投薬治療同様に痛みを起こしている部分に着目し、筋肉が緊張していればその緊張を緩め、神経が興奮していれば鎮静させることを目標とします。

1 頭痛の分類

• 片頭痛

• 緊張型頭痛

• 群発性頭痛

• 脳の病気に伴う頭痛

片頭痛

偏頭痛と書かれることもあります。片頭痛は字の如く、片側に起こりやすい傾向にありますが、必ずしもそうではなく両側に起こる場合もあります。

ズキンズキンと激しく痛み、身体を動かすと痛みが増し、反復的に発作を繰り返すのが特徴です。

目がチカチカする(閃輝暗点)、チクチクする、バランス感覚がおかしくなる、腕や脚に力が入りにくい、言葉がうまく話せないなどの前兆を伴いやすく、光や音に敏感になったり、吐き気や肩こりを伴ったりすることがあります。

特に女性に多く、月経前~月経中に起こりやすいのも特徴です。

詳しい発生メカニズムはわかっていませんが、脳の血管が拡張し、その周囲の三叉神経が刺激されて生じると考えられています。

緊張型頭痛

筋緊張性頭痛、筋収縮性頭痛とも呼ばれ、後頭部から首にかけて起こりやすく、締めつけられるような鈍痛で、比較的長く続くのが特徴です。

首・肩まわりの筋肉の緊張が原因とされており、また、ストレス、緊張、不安などの精神状態も影響を受けるとされています。

群発頭痛

目の奥をキリで突かれたような激痛が特徴の頭痛で、結膜の充血、流涙、鼻閉、鼻汁などの症状を伴い、数日から数週間集中的に起こり、1~数年に1度ほぼ同じ時期に生じるのが特徴です。

原因には諸説あり、未だメカニズムが解明されていません。

脳の病気に伴う頭痛

脳周囲の出血、脳腫瘍、感染症(髄膜炎)などを原因とする頭痛です。

痛みが急に強くなる、回を重ねるごとに痛みが徐々に強くなる、手足のしびれ・意識障害・けいれんを伴う、などの特徴があります。

頭痛の東洋医学分類

次に、頭痛の東洋医学的分類について原因別に見ていきたいと思います。

西洋医学の身体の見方と全く違うので、「え?こんなのが原因になるの?」と思われるかもしれませんが、見方が違うからこそ違ったアプローチで治療することができるのです。

なお、ここで紹介するものは現場で出くわす頻度が高いものですが、これで全てではなく、専門的にはもっとたくさんの分類があります。

細かくは、ぜひ専門家に診てもらってください。

身体の緊張癖による頭痛

身体が常日頃から固まりやすく緊張が癖になりほぐれにくい状態であると、気血水の循環がスムーズにいかなくなり、結果痛みを引き起こします。

同一姿勢で身体を動かすことが少ないデスクワークを日常的に行っていたり、身体が縮こまるような寒い場所にいることが多かったりすると、身体が固まり緊張しやすくなります。

また、東洋医学には「心身一如(しんしんいちにょ)」という考え方があります。

これは、精神状態と身体状態とは必ず相互に影響し合うということを意味しています。

ですので、イライラすることが多かったり、あれこれと細かいことを気にして神経質になっていたりと、心が固くなっていくと、身体もそれに引きずられて固く緊張しやすくなると考えています。

このタイプの頭痛は、めまい、イライラ、不眠、胸や脇の痛みなどを伴うことが多いです。

ところで、この頭痛はいかにも西洋医学でいう緊張型頭痛に似ていますが、必ずしも一致するわけではなく、片頭痛や群発頭痛にもなり得ます。

というのは、気・血・水のうちどれが滞りやすいのか、どの部位に滞りやすいのか、どの程度滞るのか、で痛み方が変わり、これらは体質や生活状況によるからです。

ですので、治療ではこれらを見極めて、その人の体質・生活状況に合ったツボを選んで施術していくことになります。

胃腸の不調による頭痛

胃腸は摂取した飲食物から栄養を吸収するものであることは誰もが知るところですが、この胃腸の消化吸収機能が不調で飲食物から十分な栄養を吸収できないと、身体にとって必要十分な気血水が供給されなくなります。

この栄養不足は、全身にまんべんなく起こる場合もあれば、局所的に集中する場合もあり、頭部に集中すると重い感じや痛みとして現れます。

このタイプの頭痛は、疲れやすい、顔面の色つやが暗い、軟便、食欲不振などの症状を伴うことが多いです。

治療法としては、胃腸の機能をフォローすることで、頭部に十分な気血水が行き渡るよう促します。

ここで、「じゃあ、たくさん食べたり、サプリを使って栄養を十分に摂取すればいいのでは?」と思われるかもしれませんが、この場合は、消化して吸収する機能が低下しているので、ドカドカと栄養素を摂取しても吸収されません。

それどころか、胃腸により負担がかかって、悪化するおそれすらあります。

植物が肥料や水分を過剰に与えると枯れてしまうのをイメージしてもらうとわかりやすいでしょう。

頭部のむくみによる頭痛

普段から飲食の不摂生が続いていて体内に余分な水分をため込みやすかったり、水分代謝が悪い体質であったりすると、むくみが生じやすくなります。

このむくみが、体質的に頭部に偏りやすいと、そこの気血水の循環が妨げられるため、頭痛が起こります。

このタイプの頭痛は、痰がからみやすい、湿気が強いと悪化しやすい、飲酒や過剰な飲食で悪化しやすい傾向にあります。

治療では、余分な水分を排出するよう発汗や排便・排尿を促すと同時に、水分代謝を改善していきます。

慢性的な感冒による頭痛

東洋医学では、体表面から冷えや熱が入ることによって風邪をひくと考えています。

体表面に十分な気血水が行き届かない状態であると、冷えや熱をダイレクトに受け止めやすいため、頻繁に風邪を引いてしまい、その度に頭痛が生じます。

このタイプの頭痛は、寒気、喉の痛み、鼻づまり、鼻水、咳などを伴いやすい傾向にあります。

治療では、体表面の気血水の循環を整え、外気の影響を受けにくくするのを目標とします。

足腰の冷えによる頭痛

足腰が常日頃から冷えていると、まるでシーソーのように上半身がカッカして興奮・緊張状態になってしまい、頭痛を生じることがあります。

足腰が冷える原因は、運動不足による循環不全、加齢や過労による足腰の弱り、水分代謝低下による下半身のむくみ等など多岐に亘るため、一つ一つ原因を特定しながら個々の状態に合わせた治療が必要となります。

このタイプの頭痛は、足腰が冷える以外に、腰の痛み、耳鳴り、疲れやすい、眠りが浅いなどの症状を伴うことが多いです。

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