夏バテと自律神経の乱れ

夏バテとは、夏の高温多湿に対応できずに生じる体調不良のことで、食欲不振や倦怠感、寝不足などの睡眠障害が出ることもあります。

通常、人間は自律神経の働きによって、暑い時に汗をかいて体温を下げることができますが、外気温や冷房の効いた室内温度など、体感温度が大きく変わることで、その自律神経の働きが乱れ、夏バテを生じさせます。

この自律神経には、「交感神経」「副交感神経」があります。

この内、副交感神経は主に寒くなると働き、体温を上昇させるために脂肪を燃やして筋肉肝臓をつくります。そして、これを血管に乗せて全身を巡らせることで体温を高めようとするのです。

この働きが上手く行かなくなると、冷え性の症状が出ることもあります。冷え性の原因として1番多いとされているのが自律神経失調症で、交感神経と副交感神経のバランスが乱れ、とくに末端の血流が滞ります。手先、足先が冷たい人は注意が必要です。

また、冷え性は女性が多いとされますが、これは、自律神経のバランスに女性ホルモンの乱れが大きく関わっているからです。

例えば、手や足は冷えているのに上半身は暑いなどが良い例です。生理痛の重さとも大きな関わりがあります。

さらに、手足の末端が冷える原因としては、低血圧も絡んできます。朝に弱い、立った時に立ちくらみがある、長く立ち続けられないなどが主な症状です。

自律神経はとても重要な神経で、生きるために欠かせないものです。休息することなく、24時間365日いついかなるときも働いているので、負荷がかかるのは必然です。そのため、なるべく自律神経を乱れさせない工夫が必要です。

また、自律神経は脳の司令塔であり、体内のすべての器官の動きをコントロールしています。とくに頭蓋骨の中にある脳は外気に晒して熱を放散させることができないため、注意が必要です。これを冷やすには、首や脇の太い血管を冷やして冷たい血液を循環させたり、鼻から冷たい空気を吸い込むしかありません。負荷がかかれば、脳の発熱量も上昇するので、オーバーヒートする前に冷やす心がけをしましょう。この熱が、ほてりや頭痛、倦怠感の原因になります。

ここからは、東洋医学的にみた夏バテをご紹介します。

夏バテの症状は、気虚、陰虚、水滞などの原因が主です。

〇気虚(ききょ)

私たちが生きる上で必要なエネルギーが不足している状態を東洋医学では「気虚」といいます。このエネルギーは、脾胃といって胃腸の消化吸収によって産出されます。夏になると暑さから、この力が弱まり気がなくなることで、気虚、夏バテの症状が出やすくなります。

では、何故、脾胃の力が弱まるのでしょうか?

夏は熱中症対策としても、水分補給が大切です。しかし、脾胃はとくに乾燥した時に本来の力を発揮するため、水分補給をすることで、本来の力を発揮できない場合があります。水分をとることは重要ですが、脾胃に水分を蓄積させないようにすることも大切です。

〇陰虚(いんきょ)

体内の水分量が不足している状態を指します。夏はとても暑く、何をしていなくとも自然に発汗しているので、どうしても水分が不足しがちです。顔がカーッと暑くなるようなのぼせを感じたり、手足のみ異様に熱く感じることもあります。

この状態は体内がオーバーヒートしていることと同意で、水分が過剰に蓄積してしまっています。上手に汗をかく習慣をつけたいところです。

インターネット社会といわれる今、仕事だけではなく、私生活でもパソコンやスマートフォン、テレビ、ゲームなどの電子機器を多用する時代となりました。しかし、これらは自律神経を乱れさせる1つの原因です。

昼間かのように明るいLED照明やブルーライトの影響など、交感神経・副交感神経のバランスが崩れやすくなっているのです。

今回は夏バテの話ではありますが、こういった現代社会ですので、慢性的に1年中自律神経が乱れている人も少なくありません。とくに高温多湿6~9月は注意が必要です。

また、近年は新型コロナウイルス感染症の流行から、生活リズムの乱れや運動不足になる人も多く、それもまた、夏バテの原因の1つです。在宅勤務やテレワークなど、一見便利でとても合理的なように思えますが、パソコンの使用頻度が増え、運動をする機会が減っているのは体調不良に直結します。

自律神経のバランスが乱れる生活が続くと、睡眠の質もあっという間に低下します。なかなか寝付けなかったり、寝不足になったり、疲れがとれず、日中の眠気や集中力の低下も引き起こします。

さらに、自律神経は胃腸の動きとも関連性が高く、便秘・下痢のほか、気力の低下や抑うつ症状といったメンタル面の不調に繋がることもあります。

自律神経が疲れているのは、現代に生きている以上、仕方ない部分もあります。しかし、毎日の生活習慣を少し改善するだけでも、自律神経の乱れを解消できます。規則正しい生活、食事のバランス、運動不足の解消、できることから少しずつ取り組んでみてください。

とにかく暑い日本の夏を元気に乗り越えるためにも、また、季節の変わり目に体調を崩さないためにも、自律神経を整える整体や鍼灸も試してみて下さい。