自律神経と乱れと睡眠障害
自律神経失調症は、慢性的な疲労感の他、頭痛、下痢・便秘、動悸・息切れ、睡眠障害、肩こり・腰痛、イライラ等、心身のあちこちに症状が出ます。自律神経失調症自体の原因は、ストレス等精神的な要因も含まれるため、うつ病等の心の病の前兆でもあることを踏まえ、早期に治療し、改善を図ることをおすすめします。生活に支障をきたすような症状でなくとも、不調に気付いたらすぐに受診してください。
自律神経は、2つの神経で成り立っています。
1つは「交感神経」と呼ばれるもので、私たちが活動的になる時に優位になる神経です。もう1つは「副交感神経」と呼ばれるもので、リラックスしている時、休息している時などに優位になります。
この2つの神経の優位・劣位は、自分でコントロールすることができませんが、健康的に生きるためにはこの働きがとても重要で、心臓や肺、胃腸、血管、色々な器官を司っています。そして、自分の行動に合わせた神経の動きができなくなると、心身に不調が出てしまう「自律神経失調症」となるのです。
冒頭でも紹介した通り、自律神経失調症の症状は多岐に渡ります。同じ自律神経失調症の方でもその症状は個人差が大きく、辛さも異なります。
◎自律神経失調症の原因
自律神経失調症に悩んでいる方が増えているのは、まず、現代人の生活の乱れが大きく関係してきます。本来は、交感神経と副交感神経の優位・劣位を上手く調節して過ごすことが望ましいですが、つい、夜更かしをしてしまう、早起きをしない、毎日決まった時間に寝起きしていない等の生活の乱れが起きやすい現代では、自律神経に悪影響が生じている人も多くいます。
また、特に女性は月経周期や妊娠・出産等でホルモンバランスが乱れやすいため、自律神経失調症の症状が出やすいといわれています。
◎うつ病との違い
うつ病は、情緒不安定になったり、やる気が低下したり、とことん落ち込んだりと、メンタル面に大きく影響する精神的な病気です。
一方、自律神経失調症は、イライラしたり、不安感に襲われることはあるものの、いわゆる抑うつ症状や意欲低下等はあまり見られません。稀にそういった症状に悩まされる方もいますが、うつ病より症状を酷く感じることはありません。
うつ病の症状は、精神的な症状の他、喉の違和感や睡眠障害、便秘等も引き起こします。自律神経失調症の症状と重なる部分も多くあるため、正直なところ、見極めは難しいです。
1つ言えるのは、うつ病の症状は日々変動があり、午前中に気分が優れず、夕方以降元気になることが多いです。
◎自律神経と免疫について
自律神経は私たちが生きるためにとても重要な役割を果たしています。その1つが「免疫機能」です。
<交感神経が優位の時>
・顆粒球(好中球、好酸球、好塩基球)の数が増える
これらが増えると、細菌や寄生虫、異物の侵入に対して免疫力が高まります。
・リンパ球の数が減る
ウイルスなどに対する免疫力が弱くなり、腫瘍細胞も増殖します。
交感神経が優位になると、ケガしている時の細菌や寄生虫に対しての免疫力が高まる一方で、抗体が作られる働きが弱まり、ウイルスに対する免疫力が低下します。
また、腫瘍細胞を攻撃するNK細胞の働きも弱まるため、増殖してしまいます。
<副交感神経が優位の時>
・顆粒球(好中球、好酸球、好塩基球)数が減る
・リンパ球の数が増える
風邪、インフルエンザといったウイルスに対する免疫力が高まり、腫瘍細胞の増殖を抑制してくれます。
副交感神経が優位の時には、交感神経が優位の時と真逆の働きが起きます。
つまり、顆粒球の数は減少し、逆にウイルス等に強くなります。また、同じようにNK細胞の働きも活発になるため、腫瘍細胞の増殖を抑えることもできます。
同じ免疫の反応が起きても、厳密には、働いている白血球の種類が自律神経の状態によって異なります。昼間活動している時と、夜間リラックスしている時、しっかりと2つの神経のオンオフができていれば、免疫の働きも偏らなくなります。
◎バランスが重要
自律神経は「整える」ことが大切です。一方が優位になりすぎると、自律神経失調症となってしまうため、そのバランスが整っている必要があります。
理想は、2つの活動量が同じくらいであることです。
昼間は、仕事をしたり、遊んだりと、身体を動かす時間なので、通常は交感神経が優位になります。逆に夜間は、お風呂に入ったり、リラックスタイムを取ったり、就寝したりと、通常は副交感神経が優位になります。
自分でオンオフが難しい自律神経ですが、生活習慣を整え、このバランスを上手く取ることが何よりも大切なのです。
◎自律神経の乱れ
自律神経失調症は、“自律神経が乱れている”状態ですが、具体的にどういったことが“乱れている”といえるのでしょうか?3つのパターンについて、解説します。
- 交感神経が優位になりすぎている
交感神経が過剰に働いているため、副交感神経が劣位になってしまっている状態です。
例えば、慢性的に緊張している等のストレスに晒されていると、交感神経が優位になり、副交感神経が優位になりにくくなります。
こうなると、十分にリラックスする時間が取れなくなり、傷ついたところを治したり、侵入したウイルスを破壊したりする力が弱くなります。
高血圧や動悸・息切れ、体重が増えにくい等の症状も出やすいです。
抗ストレスホルモンであるコルチゾール、活動力を高め、興奮させるアドレナリン、ノルアドレナリンの分泌が増えるためです。
他には、2型糖尿病のリスクも高まります。
慢性的にコルチゾールの分泌が増えると、インスリンの血糖値を下げる効果が抑制されています。
免疫力や抗炎症作用も低下するため、身体の粘膜部分や常在菌の多い部分で炎症が生じることもあります。
- 副交感神経が優位になりすぎている
こちらは逆に、副交感神経が優位になりすぎることで、交感神経が劣位になっている状態です。
リラックスできている時間が多いという意味では良いことのように思えますが、副交感神経のみが優位になるのもまた、身体に不調をきたします。
例えば、ストレスに弱くなるため、ストレスに晒される時間が長くなるとさらに副交感神経の働きを増加させ、心にも不調が伴います。
免疫力の部分では、リンパ球の割合が高まるため、ウイルスやガンには強くなりますが、自己免疫疾患になりやすいので注意したいところです。
- 双方の働きが弱い場合
自律神経失調症のタイプとしては、どちらの神経の働きも良くないタイプというのも存在します。
どちらかの神経が優位になっている時間が続くと、次第にどちらの神経も上手く働かなくなってしまうのです。
こうなると、抑うつの症状も出始めます。感情が乏しくなり、「楽しい」と思っていたことすら、楽しめなくなってしまいます。
この状態の改善には、まず、副交感神経が優位になるようにすること、そして次に交感神経の働きも取り戻していきます。
しっかりと順序よく治療を進めていくことがカギになります。
自律神経失調症に悩む人の数は増えています。それだけ、生活習慣が乱れやすい環境且つストレスに晒されている人が多いということでしょう。
何か気になることがありましたら、お気軽にご相談ください。
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