パニック障害
新型コロナウイルスの感染流行が長く続くことで、以前のような生活に戻れず、不安や、ストレスを感じている方も多いのではないでしょうか?
人の心と体は繋がっています。心が健やかでなんの心配もない状態のとき、体は健康ですが、心が不安でいっぱいのときは、体にも悪い影響が及んでしまいます。
不安が起こると、体の中では自律神経が乱れることにより、交感神経が過剰に働き、その状態が続くと「自律神経失調症」という病気に転じてしまいます。自律神経失調症になると、夜眠れなかったり、めまいや耳鳴り、食欲の低下、動悸や息苦しさを感じたりするようになり、日常生活にも支障をきたしてしまいます。
今回は、自律神経失調症とも密に関係のある「不安神経症」について、お話したいと思います。
不安はどこからやってくるのか
そもそも、なぜ人は不安になるのでしょうか?
生きていくうちにさまざまな経験をして、生をまっとうするために、不安は必要なものなのでしょうか?
不安とは、誰もが持つ心の作用の一つです。
不安とはまたは、「安心できないこと、心もとないこと、心配」と言い換えることもできます。
結果が分からない未来を想像して、好ましくないことになったらどうしよう…とか、そわそわしたり気がかりを感じたりする状態、ということもできます。
なぜ不安にならなくてはいけないのか
有名な精神医学者シュナイダーは以下の様に話しております。
「動機のない不安は人間が生きていく上での根源的な感情である」。
つまり、生命と健康に対する危機感・経済的な危機感がないと、危険に対処することができず生きていけない、というようなことを言っているのだと解釈することができます。
考えてみればその通りです。「命が危ないかも」と予知して不安にならないと、私たち人間はそれに対して対処することができないのですから、不安になるというのは人として必要不可欠な感情、心の作用だということが納得できます。
また、不安を持つことで人として肉体的・精神的な成長のために努力することができる、という側面も忘れてはいけません。
「正常な不安」と「放ってはいけない不安」がある
不安は誰もが持っていて当然のもの、感じて悪いものではない、と言いましたが、実は不安にも「正常な不安」と呼べるものと、「放置しては危ない不安」というのがあります。
正常な不安とは、なんとなくの原因を自分で説明できる、他人から理解を得られる、原因がなくなれば消失する、そんな不安のことです。こうした不安はたいてい長く続くことはなく、苦痛でも耐えられ、生活に大きな支障は出ないことが多いものです。
そして、放ってはいけない不安とは、正常な不安と逆のことです。
つまり、自分でも理由がわからない、我慢できないほど苦痛で仕方なく、まともに生活できない、人に説明することもできず、理解されない…そんな不安があり、ときに繰り返し、不安にとりつかれたような状態にあることをいいます。
専門的な話になりますが、こうした病的な不安に関係しているとされる症状や兆候をまとめて「不安障害」と呼びます。アメリカの精神医学会はこの不安障害をさらにパニック障害、全般性不安障害、社会恐怖、単一恐怖、強迫性障害、心的外傷後ストレス障害(PTSD)、否定形性不安障害に分類し、「精神疾患の分類と診断の手引き(DSM-Ⅳ)」なるものを作成しています。
恐怖症とは?不安症よりも強いもの?
恐怖とは、不安よりもよりはっきりとした感情です。不安が「何となく将来が不安」「結果が分からなくて不安…」というように漠然としたものに対して使われるものだとすると、恐怖とは「ふいに車が現れて恐怖にかられ慌てて飛びのいた」という風に、具体的な対象について作用するものだといえます。
恐怖を感じること自体は、不安を感じることと同じで悪いことではありません。むしろ、危機的状況で恐怖を感じることにより危険を回避できるようになるため、必要な精神機能です。
恐怖症には特徴があります。
・一過性であること
・恐怖の対象となる原因を避ける行動をとること
・その恐れが客観的に合理性に欠けていると本人が自覚できること
・日常生活に支障が出たり、強迫行動を取ったりする場合があること
これら4つの特徴は、単なる恐怖を感じただけなのか、それとも恐怖症という症状になってしまっているのかを判断する目安になります。これよりも悪化して恐怖症を患うことがありますが、恐怖症には2つの種類があります。
- 特定恐怖
ある特定の物やシチュエーションを必要以上に恐れるのが特定恐怖です。例えば蜘蛛やヘビなどの怖い生き物、暗闇などの場所、血が苦手で怖くて仕方ない…など、対象は人によってさまざまですが、その対象を極力避ける行動をとります。その対象物について激しく恐怖を抱いた経験があるなど、過去の出来事がきっかけになるケースが多いです。
- 社会恐怖
社会恐怖とは、人が集まる場所や社会そのものに恐怖を抱いているパターンです。例えば、人が集まる場所で話すことができない、顔が赤くなるなどして、誰かが笑っていると自分のことを笑っているのではないか…と考えてしまうなど、想像で不安を掻き立て、人前に出て何か行動することをとても恐れます。
不安や恐怖から不安神経症になるメカニズム
不安や恐怖を抱くことは正しい心の作用のはずですが、あまりに過剰な不安や恐怖を持ったり長い時間持ち続けたりすると、心と体がストレス状態になり、ホルモンの作用によって脳は緊張状態を保つことになります。さらにそれがいつまでも続くと、やがて神経伝達物質などが正常に働かなくなり、精神的に不安定な状態になります。
不安である自分を意識し、改善していく簡単なコツ
実は、不安を無意識に抱えている人は、世の中には少なくありません。自分の心と体が今どういう状態にあるのか、どうすれば不安ストレスに負けない心と体が作れるのか、ご自身でできるちょっとしたコツのようなものをお伝えします。
- 足に意識を向けること
逆説的な話になりますが、不安な心でいる間は、体も不安定になっていることが多いものです。逆に、体が安定していると、心も安定しやすくなるという関係性があります。
そこで意識を向けてみていただきたいのが、「足」です。
構造上、身体を支えている足は、無意識に動かしていることがほとんどだと思います。
ただ、不安を抱えている方というのは、考えや焦りが意識を占めているので、自分の足を意識できていない状態。タンスの角に小指をぶつけてしまう、段差のない道でつまずいてしまう、いつも同じところでそうしたことが起こる…そういうときは、「自分の足が、自分の体を支えているのだ」と心の中で唱えてみてください。
大きな大地に自分の足がしっかりと立ち、歩く…そうしたイメージを持ち、意識してみるだけで、不安が少し軽くなる、という方は意外と多いのです。
- 興奮できることをする
一般的にストレスを鎮めようと思ったときには、「リラックスして、穏やかに深呼吸する」というようなことを行いがちですが、実はストレスに効果的なのはリラックスよりも興奮です。
興奮といっても、意味もなく興奮すればよいというわけではないのですが、例えば喜んだり怒ったり、感情豊かに過ごすと、交感神経という自律神経が作用し、ストレスに強い体を作ってくれます。ですから、スポーツをする、ゲームをする、劇を観る、友人と飲む…なんでもよいので、少し体を動かしたり、少し刺激的な要素を生活に取り入れることをおすすめします。
不安・パニックの抑え方を偏桃体から考える
不安な気持ちというのは、脳の真ん中にある偏桃体という、感情や記憶を受け持つ部位が暴走することによって引き起こされる作用になります。一方、偏桃体が暴走を起こさないように、ブレーキをかけてくれる存在が体の中に存在します。それらのメカニズムを知ることで、不安や恐怖、パニックを抑えやすくなります。
- 偏桃体を守る仕組み「大脳新皮質」
大脳新皮質(だいのうしんひしつ)とは、知識や意識という感覚を司っているところです。知識や意識がなぜ偏桃体の暴走を抑え、不安を解消するのかというと、例えば原因や理由が分かれば、人は不安が和らぎます。それは知識を得て、大脳新皮質が偏桃体を落ち着かせてくれるからです。感覚的な意識も同じで、肌触りの良い毛布にくるまると得られる安心感や、良い香りを嗅いだときの喜び、美味しい料理を食べたときの満足感、そうした触覚・聴覚・味覚・視覚・嗅覚・内臓感覚・平衡間隔といった7つの感覚を得ることにより、大脳新皮質が働くことで不安を解消に導くことができます。
ただ気を付けていただきたいことが、味覚・嗅覚について。
これらは直接体にものを取り込むので、注意が必要です。美味しいものを食べることは不安を和らげる効果がありますが、だからといって甘いお菓子や好きなお酒を摂取しすぎると、体の機能が低下して偏桃体にも悪影響です。砂糖や小麦、カフェイン、唐辛子などの刺激性のある食品はなるべく避け、健康にも配慮した食事をとりましょう。
- 偏桃体を守る仕組み「内臓と筋肉」
体が緊張していると心にも緊張が伝播する、と言いますが、それは緊張した筋肉や内臓の感覚が偏桃体にも運ばれるからなのです。筋肉が緊張していたら偏桃体も緊張し、また逆に不安を感じているときはふらつきやめまいが起きやすくなります。
ですので、簡単な方法は筋肉をほぐすマッサージをする、体操やストレッチ、温泉につかるなども効果的です。お腹を膨らませて息を吸い込む腹式呼吸をするだけでも、内臓にマッサージを与える効果があるのでおすすめです。
セドナ鍼灸治療院では、自律神経の働きと東洋医学に着目した独自のメソットで多くの方から支持頂いております。
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